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看護への考え方

弘善会
矢木脳神経外科病院
〒537-0011
大阪市東成区
東今里2丁目12番13号
TEL:06-6978-2307(代表) 

患者さんが求めることには必ず意味がある

ガン末期の患者さんが求めた民間療法 
私がまだスタッフだったころの話です。40代の女性が末期がんで入院してこられました。
転移がひどく手の施しようがない状態で、積極的な治療を断念された方でした。
腹部の痛みが強くみられたその方は、枇杷の葉を温めたこんにゃくに包んで湿布すると、痛みの緩和に効果があるという民間療法を希望されました。
疼痛緩和として麻薬の使用をする段階でしたが、彼女は、強硬に麻薬使用を拒否し、民間療法を望みました。医師との相談の結果、彼女が希望する療法をしていただくことになり、私たち看護師は、鍋でこんにゃくを温めて、枇杷の葉でくるんで湿布するというケアを強いられることになりました。
「こんなことして効果があるの?」という疑問を持ちながら、半ば仕方なく毎日こんにゃくを温めていた私は「患者さんのわがままに付き合っている」というような気持だったように思います。

たくましく、気持ちの強い方だと思って
そんな民間療法でごまかしきれないほど病状が悪化したその方は、痛みに苦しむ毎日になりました。医師から麻薬を勧められても、「麻薬中毒になる」とい拒否をされていましたが、「子供たちに苦しむ顔を見せたくない。」と、子どもさんが面会に来られる時だけ麻薬を使うという選択をされました。
面会時には麻薬を使って子どもたちに母の笑顔を見せ、子どもたちが帰ると痛みで意識がもうろうとする状態。母親の笑顔だけを心にとめていて欲しいという母親の強い思いは理解できましたが、なぜそこまでして麻薬を使うことを拒否されるのか理解できませんでした。また「私は神様なんて信じない」といって、私たちにいつも強気な口調で話す方でした。私はそんな姿を見て、何とたくましく、気持ちの強い方なんだろうと思い、癒しの言葉をかけることが少なかったように思います。

本当の苦しみに気付かなかった後悔
その後、その方は亡くなられたのですが、使っておられた枕の中から、たくさんのお守りが出てきたのです。それを見て、言葉では「神なんて信じない」と言われていても心の奥底では、心のよりどころを探し、神様に祈りながらガンと戦っていたのではないかと思うと涙が止まりませんでした。最期まで子どもたちに母の苦しむ姿を見せまいと痛みと戦い、子供たちに笑顔を残したその方の、本当の苦しみに気が付かなかった自分の未熟さを悔いました。
ガンという病に気持ちまで押しつぶされそうになるのを、民間療法に頼ることでギリギリ保っていたのかもしれません。私はそんな気持ちを察することなく、義務のような気持で援助していましたが、この方にとっては、ガンと戦うための大きな治療薬だったのです。

患者さんが求めることには必ず意味がある
看護にはエビデンスが必要です。しかし、エビデンスでは応えられないケアで、患者さんを救えることもあるのではないでしょうか。患者さんが求めることには必ず意味があり、その意味を深く考えることが患者さんを救う看護なのだと私はスタッフに伝えたいと思います。



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